(18) 2003年 8月 8日  

「自然と庭づくり その2

 
草遊庭を造り始めてから、9年経ちました。
自然の野山のような庭を造っていきたいという思いで、
庭に手を入れてきました。


夏の草遊庭

 
  山の中で突然、白いヤマシャクヤクに出会った時の感動は、
まさに妖精に出遭った想いでした。
一瞬、異空間へ入り込んだような、ときめきを覚えました。
そこだけが、時間の経過から取り残されていました

山にすばらしい友人ができたような・・・・。
また来年も、ここで逢えるだろうか?

華やかな、魅力のある園芸種がどんどんと創られている現在ですが、
自然の中で出逢う草花の魅力はまた格別です。
   
  草遊庭の中で、植えた覚えのない花を見つけたときや、
季節が巡って、また去年の花に出逢えたときの感動は、
山の中で思いがけず花に出逢ったときの、あの感動に近いものが
あります。

自然のなすがままのなつかしい庭になればいいなあと思いながらも、
珍しい高山植物も
とついつい思ってしまいます。

自然の力と人間の手とがうまく拘わりあって心安らぐ魅力的な庭に
なればと考えています。


木陰の小さな流れ

 



梅雨時の雨に濡れたシャラの花

  季節の移り変わりのなかで精一杯の生き物たちに出逢います。

春浅き早春の花たちは、冬枯れの草遊庭に顔を出し、花を咲かせ、
種を作り、周りがにぎやかになってきたときは、もう、来年のために
地下の生活に入っています。

やがて、草花たちは競争するように生長し、花を咲かせます。
木々もそれぞれの木の芽立ちで、淡く彩られます。
トカゲの赤ちゃんはあちこちで日向ぼっこを始め、蟻は忙しく働き始めます。

鬱蒼と茂る夏、小さな小さな流れしかない草遊庭でヤゴやセミの抜け殻を
みつけます。(草遊庭ではセミとぶつからないよう歩きます)
生命力旺盛な夏も過ぎ、虫の声も大きくなって初秋の庭は少し落ち着きを
とりもどします。
ヤマハッカやミズヒキソウの花も鮮やかになり、風の匂いも変わってきます。

紅葉が始まり、赤とんぼが姿を見せ、ガマズミの実も赤く染まります。

赤や黄、思い思いに色づいた葉が茶色くなり散り始め、やがて冬枯れの
季節が訪れます。
年が明けると、山から何種類もの小鳥が、木の実を啄ばみに足繁く通って
きます。
たくさんのガマズミの実もあっという間になくなります。

色あせた花殻に霜が降りたのもまた感動する美しさです。
シモバシラの茎に氷がつくほど寒い冬の早朝、庭を歩くと、
風にゆられている真っ赤なヤブツバキの花が一段と映えます。

自然のすばらしさに、いつもいつも感動しています。

     


霧にかすむ書写の山々

  日本は植物の豊かな国だと、つくづく思います。
この風土が万葉の時代から建物・着物や食べ物の文化として現れていると
感じます。
草遊庭にいると、生活が自然と深いつながりをもっていることを実感します。

私たちは、そうした自然の豊かさの中で、感謝の気持ちを持って暮していき
たいと思っています。
また、そういう素晴らしい自然を子や孫の世代へ渡すのが私たちの世代の
努めだと深く感じています。

    次の年もカタクリやセツブンソウと出逢えるでしょうか。
          コナラのドングリは芽を出すでしょうか。
          メダカは卵を産むでしょうか。
          水をかけるとやっぱり蛙はいっせいに鳴きだすかしら。

    次の年にも逢えますように!